性同一障害者の婚姻と父子関係

同性パートナー間における子供に関する相談において、もともと生物学的には女性であったものの、性自認は男性だったため、生物学的に違和感を感じていた方が、性同一性障害の性別の取り扱いの特例に関する法律により、男性に性別を変更しました。その方が、その後、妻と結婚し、第三者より精子の提供を受けて人工受精により、妻が懐胎し子供を出産しました。
この場合、妻が産んだ子供を嫡出子として届け出を出すことだできるのでしょうか?

性同一性障害者の性別の取り扱い

まず、性同一性障害者の性別の取り扱いについて、お伝えしていきます。
「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」(以下「特例法」と言います)は、性同一性障害者のうち、一定の要件を満たすものについて、その者の請求により、民法その他の法令の規定の適用について、他の性別に変更することを原則として認めることを定めた法律です。
特例法は、性同一障害者を「生物学的には、性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別と適合させようとする意思を有するものであって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有するに2人以上の医師の一般的に認められている医学的知見に基づき行う判断が一致している」ものと定義しています。

上記の要件に該当する性同一障害者が、
①20歳以上であること
②現に婚姻していないこと
③現に、未成年の子がいないこと
④生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

を満たす場合、その性同一性障害者から請求を受けた家庭裁判所を、性別の取り扱いの変更の審判をすることができます。

そして、性別の取り扱いの変更の審判を受けた者は、民法その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなされます。

特例法により性別を変更した者の妻が懐胎した子供の嫡出推定

民放では、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫のこと推定する。」として、婚姻中に懐胎出生した子の嫡出性を推定しています。
それでは、前半の話のように特例法に基づき女性から男性に性別を変更した者の妻が婚姻中に懐胎した子について嫡出推定が及ぶのでしょうか。
実際に、この点が争点となったケースがあり、最高裁は「男性への性別の取り扱い変更の裁判を受けた者は、以後、法令の規定の適用について男性とみなされるため、民法の規定に基づき夫として婚姻することができるのみならず、婚姻中にその妻が子を懐胎したときには、その子はその夫の子と推定されるというべきである。もっとも婚姻期間内に妻が出産した子について、妻がその子を懐胎すべき時期に、すでに夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、または遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、その子は実質的に嫡出子の推定を受けないことは、当審の判例とするところであるが、性別の取り扱いの変更の審判を受けたものについては、妻との性的関係によって子をもうけることはおよそ想定できないものの、一方でそのような者に婚姻することを認めながら、他方で、その主要な効果である嫡出子の推定についての規定の適用を、妻との性的関係の結果もうけた子であり得ないことを理由に認めないとすることは、そうとうでない。」と判示しました。

なので、先ほど前半のお話の例においても、実質的に嫡出子の推定を受けない事情、すなわち夫婦の実態が失われていたことが明らかなこと等の事情がない限り、生まれてきた子供は嫡出子として推定され、嫡出子として戸籍の届出ができます。

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