戸籍上の名前変更の要件

トランスジェンダーにおいて、未成年の子を有するなど、戸籍上の性別の取り扱いの変更の要件を満たさない場合や、要件となる性適合手術の経済的・肉体的負担から、手術を望まない人もおり、戸籍上の性別の取り扱いの変更を行なっていない人は少なくありません。
そうした人たちが、自分の認識する性と異なる性に基づき与えられた自分の名前について違和感を覚える場合に、通称名で生活をすることがあります。
ただ、病院や会員登録など戸籍上の名前が基準となる場所では、診察に当たり戸籍上の名前を呼ばれたり、必要な身分証の提示をする際に、戸籍上の名前との差異から好奇の目にさらされることもあり、そのことを苦痛に感じて、病院に行きたくても行けないという人もいます。

これに対して、一般的な身分確認の手段として用いられる自動運転免許証上は性別の記載がないため、写真の外観と名前が自認する性に沿ったものとなれば、日常生活上、不愉快な思いをする場面を減らすことができるようになります。
それでは、戸籍上の名前を変更するには、どのような要件があるのかお伝えします。

名前変更の要件

名前の変更については、戸籍法107条の2という条文に規定があります。
「正当な理由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」
と定められています。

では、変更要件である「正当な理由」とはどのようなものを指すのでしょうか?
これについては、一般的には、名の変更をしないとその人の社会生活において支障をきたす場合をいい、単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望のみでは足りないとされています。

具体的には、
①奇妙な名前であること
②難しくて正確に読まれない名であること
③同姓同名者がいて不便があること
④外国人と紛らわしいこと
⑤神官若しくは僧侶となるため、またはこれを辞めるために名の変更が必要であること
⑥通称として長年使用したこと

などがあります。
性同一性障害という診断を受けたものについては、改名後に希望する名前の使用実績があれば、改名が認められることが多いようです。
改名後の名前の使用実績の例としては、トランスジェンダーに理解のある病院での通称での診察券や、作成に当たり身分証の確認が不要な会員証などがあります。
使用実績の機関としては、おおよそ1年程度と言われていますが、それより短くても、改名が認められているケースもあります。

また、長時間にわたる通称の使用実績がある場合には、性同一性障害との診断を受けていなくても、改名が認められる場合があります。
おおむね、5年もどの使用実績があれば、改名が認められているようです。
なお、戸籍上の名前を変更しても、身分証明書類に性別の記載がある場合には、外観と性別の記載との差異による前記のような問題は残ります。

この点、健康保険証については、厚生労働省により「被保険者から被保険者証の表面に戸籍上の性別の記載をして欲しくない旨の申し出があり、やむ得ない理由があると保険者が判断した場合は、裏面を含む被保険者証全体として、戸籍上の性別が保険医療機関等で容易に確認できるように配慮すれば、保険者の判断によって、被保険者証における性別の表記方法を工夫しても差し支えありません。」との通知が出されています。
健康保険の被保険者証による身分確認において、被保険者証の裏面まで確認されることは少ないと考えられるので、被保険者証の戸籍上の性別の表記を裏面に記載してもらうのも、前記の問題を回避するためのひとつの手段と考えられます。


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