遺留分における紛争の予防手段

遺言や生前贈与により、遺留分減殺請求権がされることをあらかじめ予見し、または予見できるような場合には、「紛争を予防する」手当てをしておくことで円滑な財産継承を行うことができ、また、紛争の当事者間において険悪な関係となってしまうことを回避することができます。
遺留分による紛争を回避するための例として「遺言書の記載により遺留分減殺請求を回避する方法」をお伝えしていきます。

事案の概要

遺言者Xは85歳男性で5年前に妻Aが死去し、この度行政書士Yに公正証書遺言の作成について相談をしました。
家族構成は離婚した前妻Sとの間に長男B、亡妻Aとの間に長女Cがおり、推定相続人は長男B及び長女Cの2名になります。
長男Bについては、成人するまでは養育費も支払い、面会交流もしていましたが、現在は交流がない状況です。
長女Cについては、Cの世帯収入は高額であり、生活は安定しています。また、Cは自宅を購入する際に、遺言者Xから生前贈与として1,500万円の援助を受けています。

以上の家族事情を踏まえて、遺言者Xは、行政書士Yに状況をこう伝えています。
①長男Bの連絡先が分からない。
②長女Cに対する援助は、相続分の前渡しをしていると認識している。
③長女Cの所得は低額と言えない上に、総体的に裕福な暮らしをしているため、これ以上親が援助する必要はないと考えている。
④自分の死後、自宅は売却し、全ての遺産を社会貢献及び自分が支援したい人のために使いたい。
⑤遺留分というものはよく知らない。
⑥毎月の出費がそれなりに必要であるため現在保有してる資産がどれくらい残るか分からない。

遺言者Xの所有遺産
自宅土地建物 固定資産評価額合計約2,000万円
預貯金等   合計約6,000万円
遺贈する相手及び遺贈する割合の要望
親族D 8分の1
政治家E 8分の1
〇〇教団F教会 8分の3
公益財団法人G 8分の3

上記の事情を勘案し、遺留分を考慮せずに遺言者の要望どうおり遺言書を作成すると、長男Bと長女Cから受贈者に対する遺留分減殺請求がなされる可能性があり、遺言執行者が遺言執行手続きに苦慮する可能性があります。
全ての遺産を遺贈するとなれば、これまでの長男Bとの父子関係を考慮すると、Bからの遺留分減殺請求を回避することは難しい状況になります。
遺留分減殺請求を回避することが難しい以上、受遺者に迷惑をかけるよりも遺贈額を減らして、長男B遺留分相当額を相続させること遺留分減殺請求を回避する方が得策です。
行政書士Yは、遺言者Xに、遺留分制度について説明をした結果、
遺言者Xは、遺留分の請求があると、受遺者に迷惑がかかるため極力遺留分請求をされるような状況は避けたいと申し出されました。

そこで提案としては、
①全額の遺贈は諦めて、事故の保有する資産からおおよその遺留分をあらかじめ計算した上で、遺贈する金額を設定する。
②長男Bには、自宅を相続させることにより遺留分に相当する価額を相続させる。
③長女Cについては、生前に1,500万円生前贈与しているため、別途高額な金銭を相続させる必要はなく、遺贈した金銭及び葬儀費用、未払債務、遺言執行費用等の必要経費控除後の金融資産の残額の全てを相続させる。
④遺贈先に優先順位を指定して、万が一遺留分減殺請求された時に、劣後する遺贈先から優先的に減殺されるように減殺順序を設定。
⑤遺留分減殺請求をして欲しくない旨を付言事項に記載して、心情に訴える。

これらの提案により遺言者Xは、遺贈する金額について次の通り変更をしました。
親族D 金500万円(または8分の1)
政治家E 金500万円(または8分の1)
〇〇教団F教会 金1,500万円(または8分の3)
公益財団法人G 金1,500万円(または8分の3)

遺言者Xは、自分の死亡時に資産の残額がどれくらい残るか分からないことに不安を持っているので、総資産の約半分である4,000万円を遺贈するための原資として、約2,000万円で余生を過ごすことを見込んで遺贈する割合を計算をしました。
遺言者Xが長生きすることで、保有財産が大きく減少してしまい、遺贈する金額に満たなくなった場合は全ての遺贈額が割合にて計算されることになります。

当事務所では、遺言者等が遺留分制度を理解しないまま遺言書を作成または贈与をすることにより、当事者が望まない紛争が起きないように、遺言書を作成する際には、遺留分制度について十分にご説明をした上で、紛争を回避する手段等を提案してまいります。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。