「うらやましい孤独死」

ひとり暮らしの人が、誰にも看取られることなく死んでいく「孤独死」は、悲惨な詩の代名詞のように言われていますが、本当にそうなのでしょうか?

「孤独死」の曖昧な定義

ひとり暮らしの人が誰にも看取られることなく、アパートなどでひっそりと死亡することを孤独死と言われていますが、以前こちらでも紹介させていただいた、上野千鶴子さんの「在宅ひとり死に」では「孤独死」に確たる定義もなく、それぞれの統計ごとに定義は異なると伝えられています。
例えば、都市再生機構による定義は「団地内で発生した死亡事故のうち、病死は変死の一態様で、死亡時に単身居住している賃借人が誰にも看取られることなく賃貸住宅内で死亡し、活動等期間(1週間を超えて)発見されなかった事故(ただし、家族や知人等による見守りが日常的になされていたことが明らかな場合、自殺の場合及び他殺の場合は除く)」とあります。
これに代わる全国統計がないのは、自治体ごとに定義が異なるからです。

この曖昧な定義に当てはまれば「孤独死」と一括りにしてしまうのも、違うような気がしますし、それこそ、ひとりで暮らしているお年寄りがひとりで死んだら「孤独死」とされてしまうのも、なんだか乱暴な話だなと思います。
なぜなら「孤独死」の定義を変えてしまえば「孤独死」件数の統計は簡単に変わります。

「孤独死」をなくすためには、死後の発見を早くすれば少なくすることはできますが、ほんとうに問題なのは、死後の発見よりも、生きている間の孤立であるということは、上野千鶴子さんも本で書かれています。

「うらやましい孤独死」

医師であり、医療ジャーナリストの森田洋之さんも新刊「うらやましい孤独死ーー自分はどう死ぬ?家族をどう看取る?」では、自身が6年前の夕張で目の当たりにした「死」について書いています。

ある高齢女性が、独居の実姉が自宅のソファーで亡くなっているのを発見しました。発見時にはすでに死後数日経過していて、これこそ世間一般で言われるところの「孤独死」でした。

しかし、それを見た彼女は「本当にうらやましいよ。コロっと逝けたんだもの。あの年までずっと元気に畑もやっててね。夕張のみんなに囲まれてさ、やっぱりここがいいんだよ、住みやすい。都会には行けない。都会行ってアパートだの、施設だのに入りなさいって言われてもね。夕張で最期までみんなと元気にしててコロっと逝けたらいいよね。本当にうらやましい。都会に行ったら早死にしちゃうよ。」

彼女からは、「孤独死」のイメージとかけ離れた「うらやましい」という言葉が出ました。そこにはまるで悲壮感がなかったそうです。

森田さんは、なぜ彼女は痛ましいはずの孤独死を「うらやましい」というのか、その問いに対して「破綻からの奇蹟ーー今夕張市民から学ぶこと」という本で、こう書いています。

「孤独死」というと、えてして死という事象に注目してしまう。しかし、じつは死にもまして「孤独」の方にこそ注目するべきなのではないだろうか。

孤独死の問題の本質は、死ではなく、高齢者がそれまで孤独に生活して言いたことではないだろうか。そう、孤独の方にこそ問題があるのだ。腐乱死体にまで至ってしまうのは、その孤独の結果だろう。

逆に、夕張の例は、死に至るまでの生活が孤独ではなかったのだ。そもそも人間の死亡率は100%、誰もがいつかは必ず死を迎える。その死に至るまでの生活が、地域の絆という人間関係の中でのいきいきとしたものであれば、それはある意味人間としての本来の姿でありそれこそ「うらやましい」と言えるのかもしれない。

「死」よりも「孤独」の救済を

社会全体として重要なことは、いずれ必ず訪れる「死」の瞬間がひとりなのかそうでないのということにもまして、人生の黄昏時を迎えた人々の生活を孤独に追いやってしまってはいないか・・・という点にあるのではないだろうか。

この考察について、「当該事例はいわゆるPPK(ピンピンコロリ)の事例であって、それがたまたま独居の高齢者だっただけである。うらやましいのはある意味当たり前である。」という批判もあったようです。

しかし、そんなことはないと森田さんは断言しています。

わたし自身も「それまでの人生が孤独でなくいきいきとした人間の交流がある中での死であれば、たとえ最後の瞬間がいわゆる孤独死であったとしても、それはうらやましいと言える」のではないかと思います。

人間がかかる最も重い病気は「孤独」である。
孤独は確実に健康を害していきます。健康を害する要因として、喫煙や肥満、アルコールなどがあるが、それらを抑えてもっと健康を害する因子とされているのが「孤独」です。

先日12日、政府でも「孤独問題」に取り組むため「孤独」担当相を新設されました。
人々とふれあう機会が失われ、女性や若者の自殺も問題になっている中、総合的な孤独対策を求める声が上がっています。
社会的に孤立し不安を感じている人に、少しでも多く手を差し伸べていけるような社会づくりを進めていけると良いです。

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