アウティングの問題〜LGBTプライバシーの保護〜

もし、あなたがトランスジェンダーであることを信頼している友人に告白した時に、その友人が他の人に「わたしがトランスジェンダー」であることを話していることを知ってしまった場合、これを止めることはできるのでしょうか?

アウティングとは

LGBTであることを本人の了解を得ないで他人に話してしまう行為を「アウティング」と表現することがあります。
先ほどの例のように、トランスジェンダーであるという他人の情報を暴露するアウティングは違法行為になる可能性もあります。

[身近なアウティングの例]
・部活動の同性の先輩に告白したら学校に広まった
・教員に打ち明けたら、保護者や他の教員に伝えられた
・相談した上司から、同僚に広まった
・人事書類で戸籍上の性別を知った同僚に、暴露された
・戸籍上の性別が外から分かる形で行政から郵便物が届き、同居人に見られた

セクシュアルマイノリティの約25%が「アウティング」をされた経験を持つことが、2020年10月に行われた当事者約1万人を対象にした意識調査でわかっています。
この調査をした宝塚大の日高教授は「カミングアウトしていない当事者にとって、アウティングは生活が崩壊するのではないかと恐怖を感じる行為だ。最悪の場合は自死につながる」と注意を促しています。

東京都の国立市では、国立市女性と男性および多様な性の平等参画を推進する条例が平成30年4月1日に施行されており、この条例において「何人も、性的指向、性自認党の公表に関して、いかなる場合も、強制し、もしくは禁止し、または本人の意に反して公にしてはならない」というアウティングを禁止する規定が設けられており、行政上の動向として注目をされています。

また、アウティングに関しては、令和元年5月29日に成立した「女性活躍推進法等改正法」の附帯決議においてパワーハラスメント防止対策に関わる指針の策定にあたり、包括的に行為類型を明記する等、職場におけるあらゆるハラスメントに対応できるよう検討するとともに、職場におけるあらゆる差別をなくすため、性的指向・性自認に関するハラスメントおよび性的指向・性自認の望まぬ暴露である「アウティング」も対象になり得ること、そのためアウティングを念頭に置いたプライバシーの保護を講ずることを明記することとされました。

プライバシー権侵害に関する判断基準

プライバシー権に関する先例的価値のある判例として「宴のあと」事件があります。
この判例においては、プライバシー権について、私生活をみだりに公開されないという法的保障ないしは権利として、これが侵害される場合の要件として、公開された内容が、①私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること、②一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合公開を欲しないであろうと認められる事柄であること、換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによって心理的な負担、不安を覚えるであろうと認められる事柄であること、③一般の人々にいまだ知られていない事柄であることとし、このような公開によって当該私人が実際に不快、不安の念を覚えたことを必要とすると判示しました。

セクシュアルマイノリティであることのプライバシーの該当性

セクシュアルマイノリティであることは、人格の根幹に関わる重要な情報であり、私事性が認められるといえます。
先ほどの例において、カミングアウトをした相手の友人が、トランスジェンダーであると「アウティング」する行為は、その当事者のプライバシー権を侵害する違法行為になり得ると言えます。
実際には、セクシュアルマイノリティであることについて、公開した経緯、後悔の態様、公開した理由などの諸般の事情により、違法性が認められて不法行為となるかを判断することになります。
例えば、セクシュアルマイノリティであることが公知であったとか、公開された相手が既に、あなたがセクシュアルマイノリティであることを知っていた、その当事者がセクシュアルマイノリティであることを秘密にすることよりも、知らせなければならなかった理由が認められる場合など例外的な事情がなければ、アウティングは民法709条に規定する不法行為になり得ます。

まとめ

今回、カミングアウトをした相手である友人が、トランスジェンダーであることを無闇に他人に話す行為については、プライバシー権や名誉権を侵害する不法行為であると警告して、その行為を止めるように請求することができます。
また、その友人のアウティングにより、精神的苦痛その他の損害を被った場合は、慰謝料等の被った損害を賠償するように請求することができます。
なお、アウティングの手段としてFacebookやTwitterなどのSNSが利用された場合は、不特定多数の者が知り得る状態になるため、権利侵害(違法性)や精神的苦痛の程度が強く認められる可能性があります。
そして、このようなネット上の投稿が匿名でなされたとしても、プロバイダー責任制限法4条1項に基づき、氏名または名称、住所および電子メールアドレスの開示を求めることができます。

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