性的指向・性自認に関係する性的な言動とセクハラ

性的指向・性自認に関係する言動もセクハラに該当するのでしょうか?
そのような言動がセクハラに該当するとして、どのような言動に気を付けていく必要があるのでしょうか?
また、性的指向・性自認に関係するセクハラの予防・事後対応として企業はどのような点に留意しておくべきでしょうか?

性的指向・性自認に関係する性的な言動とセクハラ

セクシュアルハラスメント(以下セクハラと言います)とは、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により、その労働者が労働条件で不利益を受け、またはその性的な言動により労働者の就業環境が害されること」を言います。(雇用機会均等法11条1項)

これまで、「セクハラ」というと、異性間での言動がイメージされることが多かったですが、平成12月に開催された第139回労働政策審議会雇用均等分科会において、当時の雇用均等政策課長が「性的マイノリティの方に対する言動や行動であっても、均等法11条やセクハラ指針に該当する者であれば、職場におけるセクシュアルハラスメントになると考えています。」と回答しており、行政解釈としては、性的指向・性自認に関係する性的な言動もセクハラに該当するという立場をとっていました。

しかし、そのような解釈があまり知られていなかったことから「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して来よう管理上講ずべき措置についての指針」(以下「セクハラ指針」と言います)が平成28年8月に改正され、改正後のセクハラ指針でようやく「被害を受けた者、、、の性的指向または性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となる者である」と規定され、性的指向・性自認に関係する言動も「セクハラ」になると明記されました。

性的指向・性自認に関係するセクハラの防止・事後対応の留意点

前記の通り、セクハラ指針において、性的指向・性自認に関係する言動もセクハラになることが明記されたことから、事業主は、セクハラ指針に基づく措置を講じることが求められています。
セクハラ指針においては、大きく分けて、①事業主の方針の明確等、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応、④①から③までの措置と併せて講ずべき措置を講じることが求められています。

①事業主の方針の明確化等
まずは、経営層・管理職がセクシュアルマイノリティはどの職場においても存在する可能性があることを認識した上で、職場において性的指向・性自認に関係するセクハラがあってはならないことや、そのような言動を行った者については厳正な処分を行うことがある旨のメッセージを社内に発信し、周知することが必要です。

セクハラ指針では「職場規則その他の職場における服務規律等を定めた文書」において、セクハラ防止に関する規定を設け、職場で周知することも求めているため、性的指向・性自認に関係するセクハラについても規定化しておくことも必要になります。

もっとも、性的指向・性自認に関係する言動はパワハラなど他のハラスメントについても問題となり得るため、ハラスメント一般について網羅するのであれば、厚生労働省の「モデル就業規則」を参考にすると良いです。

LGBTに関する理解が十分ではない状況であれば、社員向けに社内研修、セミナー等を実施し、LGBTの基本的な事項や、LGBTの当事者にとってどのような言動がストレスになるのかといった事項について啓発活動を行うのも良いでしょう。

②相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口において、性的指向・性自認に関係するセクハラに関する相談についても受け付けるようにして、その旨を社内に周知しておくことが必要です。
相談窓口での対応をする人事担当者、産業医、相談窓口担当者等に対しては、一般社員への研修とは別に、問題となりうるケースを想定した研修を実施しておくことが必要になります。その際には、特に秘密保持の徹底について十分に説明することが大切です。

③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
セクハラ指針により、性的指向・性自認に関係する性的な言動がセクハラに該当し得ることが明確化されたこともあり、そのようなセクハラの申告があった場合に、事業主として「わからないから対応できない」では済まされず、迅速かつ適切な対応を行う必要があります。
具体的に、性的指向・性自認に関係するセクハラにおける調査では、①調査を行うのか否か、②調査を行うことになった場合に、どのような方法で調査を行うのかという点について、申告者と協議を行い、申告者の人格的利益やプライバシー(深刻者の性的指向・性自認の秘密保持等)に配慮した調査を行うことが重要です。

④①から③までの措置と併せて講ずべき措置
申告者の申告により調査を実施した結果、セクハラが認定された場合には、行為者に対して懲戒処分を含む社内処分を実施する必要がありますが、性的指向・性自認に関係するセクハラとの関係では、(故意犯ではなく)この問題への理解が十分になされていないということが原因となっている可能性がありますので、再発防止策が非常に重要になります。
性的指向・性自認に関係するセクハラは無知・偏見等によりなされるという背景があるため、再発防止策としては、やはり社内研修が重要になります。
なお、再発防止策を策定する場合も、申告者が申告した具体的なケースについてどこまで取り上げるかといった事項については、申告者のプライバシーとの関係が問題となるため、再発防止策の具体的方針についても、申告者の意見も聞きながら進めていくと良いでしょう。

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