性的指向・性自認に関係する言動とパワハラ

職場での性的指向・性自認に関係する言動がパワハラになることがあるのでしょうか?
また、性的指向・性自認に関係するパワハラの予防・事後対応として、企業はどのような点に留意しておくべきでしょうか?

問題となり得る言動

パワハラの行為類型については「職場のパワーハラスメント対策の推進について」に6類型分類されています。今回は、性的指向・性自認に関係する言動で問題となりやすい3つの行為類型について取り上げます。

①精神的な攻撃
LGBTへの否定的評価などLGBT社員の人格を否定するような言動はパワハラの典型と考えられます。
②人間関係からの切り離し
LGBTについて、否定的な上司や同僚がいる場合、性的指向・性自認を業務遂行能力に結びつけたりする言動により、無視や仲間外れといった「人間関係からの切り離し」に該当する言動がなされる可能性があります。
③個の侵害
個人がいかなる性的指向・性自認であるかは人格的利益と関連した基本的にはプライベートな事項であり、カミングアウトをするかしないかも個人の選択の問題なので、カミングアウトなどについて過度に介入した場合は「個の侵害」としてパワハラに該当する可能性があります。

このように、性的指向・性自認に関係する言動もパワハラに該当することがあり、特にLGBTの存在自体を否定するなどの人格的利益を侵害するような言動や、不用意に性的指向・性自認と業務遂行能力などを結びつけた発言については、パワハラに該当する可能性が高いため、社内研修等において十分に周知しておく必要があります。

性的指向・性自認に関係するパワハラの防止・事後対応の留意点

性的指向・性自認に関するパワハラについては、現時点においてセクハラ指針のように法令に根拠を有する指針はありません。
平成28年7月に厚生労働省が公表した「パワーハラスメント対策導入マニュアル」には、「性的指向や性自認についての不理解を背景として「人間関係からの切り離し」などのパワーハラスメントにつながることがあります。このようなことを引き起こさないためにも、職場で働く人が性的指向や性自認について理解を増進することが重要です。」と記載されました。

このように、行政解釈として、性的指向・性自認に関係する言動がパワハラに該当する場合もあるということが示されたこともあり、企業が従業員に対して、パワハラに関する研修等を実施する場合には、パワハラに該当し得ることも盛り込んでおく必要があります。

もっとも前記の「パワーハラスメント対策導入マニュアル」において、7つの取り組みを実施すると良いとされています。
「予防するために」
①トップのメッセージ
②ルールを決める
③実態を把握する
④教育する
⑤周知する
「解決するために」
⑥相談や解決の場を設置する
⑦再発防止のための取り組み

気をつけておきたいことは、セクハラの場合は、セクハラに関する言動は業務遂行において不必要であるため、疑われるような言動を含めて、そのような言動をしなければ良いということですが、パワハラの場合は、例えばトランスジェンダーの服装といった職場で生じた性自認等に関係するトラブルを解決するためには、一定程度踏み込んだ発言をせざるを得ないようなケースもあり、業務指導の範囲内の言動であるのか、パワハラであるのかが微妙なケースもあります。
なので、申告者からパワハラであると主張されている言動については、なぜ行為者がそのような言動をするに至ったのかという経緯が非常に重要になるという点に気をつける必要があります。

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