セクシュアルマイノリティの採用活動に関する問題

採用活動において、以下の対応について注意するべき点はあるのでしょうか。
①採用面接の際に、応募者の性的指向・性自認を確認すること
②採用選考時に、応募の性的指向・性自認が判明した場合に、そのことのみで不採用とすること
③採用面接の際に男性と申告していた内定者が、入社前にトランスジェンダーであり、戸籍上の性別は女性であることが判明した場合に、不実の申告などを理由に内定を取り消すこと。

応募者に対して性的指向・性自認を確認することの当否

企業には、採用に自由が認められているので、その採用の自由の一内容として、調査の自由が認められています。
なので、採用面接において、応募者の性的指向・性自認を確認することも許されるという解釈も成り立ちます。
しかし、採用選考は、応募者の適正・能力を判断するためのものと考えられるため、通常の場合は性的指向・性自認と適正・能力については無関係と言えます。
そこで、採用選考時の性的指向・性自認の確認の当否については、何のために確認するのかという確認の目的が重要になってくると考えられます。

性的指向・性自認を理由として不採用とすることの当否

採用面接において、応募者から性的指向についてカミングアウトを受けることもあります。
このようなケースにおいて、性的指向等のみを理由に不採用とすることの当否については、厚生労働省のホームページに掲載されている「公正な採用選考の基本」に、「障害者、難病のある方、LGBT等性的マイノリティの方(性的指向及び性自認に基づく差別)など特定の人を排除しないことが必要です。特定の人を排除してしまうというのは、そこに予断と偏見が大きく作用しているからです。当事者が不当な取り扱いを受けることの内容ご理解をいただく必要があります。」と記載されており、注意が必要です。
つまり、性的指向等と能力は基本的には無関係ですので、性的指向等のみを理由に採用を拒否した場合には違法と判断される可能性が高いと解されます。

実務上では、次の点に注意が必要になります。
まず、判例上、不採用の理由を応募者に介する義務はないと考えられているため、例えばLGBTの応募者であっても不採用の理由を開示する必要はありません。
ただし、採用面接時に、カミングアウトを受けた途端に面接官の態度が変わったなどといった事情がある場合、たとえ性的指向等のみを理由に不採用にしたのではなかったとしても、性的指向等のみを理由に不採用としたということを疑われる事情となり得るため、カミングアウトによって採否の結果が変わったというような無用な誤解を応募者に与えることがないように注意が必要になります。

性別の不実申告等を理由とした内定取り消しの当否

採用が成立した段階で、始期付解約権留保付労働契約が成立していることから、採用内定の取り消しは、この留保解約権の行使の問題となります。
取り消しの事由として認められるのは、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています。

そして、トランスジェンダーであること(内定者の性自認)は業務遂行能力と無関係であり、また、現時点においてトランスジェンダーである応募者が履歴書に外見と異なる性別を記載して企業に提出した場合に、採用されないのではないかと考えてしまうことにはやむを得ない面があることなどからすると、戸籍上の性別と異なる性別を履歴書に記載したという事実のみで内定を取り消した場合に、その内定取り消しは無効と判断される可能性が高いと解されます。

※少し、事案は異なりますが昭和49年に、外国籍の社員が、採用面接の際に「本籍欄」に日本における出生地を、「氏名欄」に日本名を記載したことを理湯として会社がその社員を留保解約権に基づく解雇処分とした事例において、その解雇が無効と判断されています。

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