性的指向等に関係する解雇に関する問題

LGBT社員に対する解雇の有効性は、職場で次のようなことがあった場合に、どのように判断しますか?また、どのような点に気をつける必要があるでしょうか?

①A社員は、バイセクシュアルであるとカミングアウトしたところ、その次の日になんらかの具体的な理由を告げられることもなく解雇された。
②ゲイであるB社員は、経理を担当していたが、帳簿を不正に操作するなどして、会社のお金約200万円を横領したため懲戒解雇された。
③トランスジェンダーであり、店舗の窓口にて顧客対応を行なっていたC社員が突然身体上の性別と異なる服装で出社してきたことで、会社とトラブルになり解雇された。

解雇の有効性判断の基本的な考え方

非違行為を行なった社員を懲戒解雇する場合でも、能力不足の社員を普通に解雇する場合でも、その社員がLGBTであるか否かに関わらず、解雇が有効かどうかは、その解雇が客観的に見て合理的な理由があるか、及び社会通念上相当であるかどうかで判断されます。
したがって、LGBT社員に対する解雇の有効性の判断においても、客観的に見て合理的な理由があるか、及び社会的相当性があるかどうかの判断が重要になります。

では、先ほどの例を①から③まで順に見ていきます。

① LGBTであることを理由とする解雇事例

設問の①のケースは、解雇事由に該当するような事情がないような場合で、A社員がバイセクシュアルであるとカミングアウトした次の日になんらかの具体的な理由を示さずに突然解雇をしていることからしても、LGBTであることを主たる理由として解雇した事案であると推認されます。
このような、解雇を正当化する合理的な理由は見出しがたいことから、原則として解雇は無効と判断されると解されます。
ただし、実務上使用者側から、本人の性的指向によりトラブルが生じていたといった主張がなされることが場合もあるかもしれません。

②LGBTとは無関係の解雇事例

設問②のケースは、200万円という多額の金銭を横領したという理由での解雇もあり、客観的に見れば、その解雇はB社員がゲイであることとは無関係の理由によるものと推認されます。
したがって、このケースでは、性的指向・性自認に関係する特段の検討は原則的に不要であり、通常の解雇事例と同様に解雇の有効性が判断されます。
ただし、社員の性的指向を理由に普段より重い処分が課されていないかなど注意が必要です。

③間接影響ケースにおける解雇事例

間接影響ケースにおいては、個別の事案ごとに企業側・LGBT社員側の双方に一定の理解・配慮と相互の調整が必要になると解されるため、その有効性の判断の中で
ア)企業側に要請されるLGBT社員の人格的利益等への理解と配慮の内容・程度
イ) LGBT社員に要請される職場の秩序維持等への配慮の内容・程度
ウ)双方の要請が対立した場合にその問題を解決するために行った協議の経緯・内容

これら、アからウが考慮されると考えられます。

例えば、企業とLGBT社員との間で、トラブルが発生しており、企業が本人との間で問題解決のため協議を繰り返し、合理的な解決策も提示し、企業秩序に反する行為に対しては注意・指導も再三行ったにも関わらず、解決の糸口が見出せず、実害が生じていたり、生じる可能性があるようなケースにおいては、最終手段として解雇が有効とされるケースもあり得ます。

本件においては、事業主としてC社員に「社員教育を行うまではこれまでの服装で出社してもらいたい」など、実質的な協議を行なっておくことが重要で、その協議の過程において事業主が合理的な対案を示すなどしたにも関わらず、C社員が服装について一定期間配慮することに同意せず、顧客との間にもトラブルが生じたといった事実があるようなケースにおいては、解雇が有効と判断される場合もあります。

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