職場で性自認に応じた通称を使いたいと言われたら

例えば、社員の中にトラスジェンダーの社員が勤務していて、その社員から「自認する性別に基づく通称を使用したい」という要望があった場合にはどうしたら良いでしょうか?
できるだけ社員の要望に応えたいという気持ちがあっても、これを認めた場合、人事労務関係の手続きなどで過誤が生じる可能性が増加するといった懸念もあります。
このような場合に通称使用の要望があれば、使用者は通称の使用を認めなければならないのでしょうか?

職場での通称(戸籍と異なる氏名)の使用

従来は職場での通称の仕様の問題といえば、婚姻により戸籍上の「氏」が変更された社員から、婚姻前の「旧姓」の利用を認めて欲しいという要望がありました。
このような場合に、通称の使用を認めている企業もあります。
しかし、認めていることと、認めなければいけないのかという問題は別問題になります。

前記の通り、通称の使用を認めた場合に、労働保険・社会保険といった公的制度の手続きにおいて、本人との同一性の確認に支障をきたす可能性や、給料の支払い口座名義等を確認する必要が生じるなど、事務手続きが煩雑化し、過誤が生じる可能性が高くなります。

一般論としては、労働者に対して職場での通称の使用を認めることは、義務までではないとされています。
裁判例でも、「職場という集団が関わる場面において職員を識別し、特定するものとして戸籍上の氏の使用を求めることには合理性、必要性が認められるということができる」と判示しており、職場での戸籍上の氏名の使用の合理性・必要性を肯定しています。

職場での自認する性別に応じた通称の使用

一般論としては上記のように解されるとして、トランスジェンダーの社員が戸籍上の氏名とは異なる自認する性別に応じた通称の使用を求めてきた場合には別途の考慮が必要になる可能性があります。

旧姓の仕様については、婚姻という自らの行為によるものとも捉えられますが、トランスジェンダーの場合には、自認する性別に応じた通称の使用が、人格的利益と関連しており、かつ自らの意思ではいかんともしがたい事情でもあるといえますので、通称を使用する必要性については、旧姓の場合よりも高いとも考えられます。

特に、医師による性同一性障害であるとの診断がなされているケースにおいては、より辞任する性別に応じた通称を使用する必要性が高まるといえるため、そのような場合には、使用者側の手続き上の負担や過誤のリスク、対外的な影響を検討した上で、自認する性別に応じた通称の使用の可否について、慎重に考える必要があります。

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