性的指向・性自認に関係する労働条件、人事上・事実上の措置に関する考え方

会社に、セクシュアルマイノリティであるということをカミングアウトしている社員がいる場合に、賃金や福利厚生といった労働条件を定める場合や、解雇や配置転換といったさまざまな人事上・事実上の措置を行う場合に気をつけなければいけない点はどこでしょうか?

性的指向・性自認に関係する労働条件の差異

現行法下において、職場における性的指向・性自認に関係する労働条件、人事上・事実上の措置(以下、「労働条件等」と言います)について直接的に規制をする法律はありません。

まず、セクシュアルマイノリティであることのみを理由に労働条件に差異を設けることは、合理的な理由を見出すことが困難なため、公序良俗違反等を理由に原則として違法・無効とされる可能性が高いです。
ただし、その差異が生じている理由が、法律上同性婚が認められていないことに起因するなど相応の理由に基づく場合には、違法・無効とまではされないケースもあると解されます。

性的指向・性自認に関係する事実上・人事上の措置に関する取り扱い

事業主が行う解雇等の事実上・人事上の措置において、性的指向・性自認に関係する問題が生じる可能性があるケースとしては、以下の3つが想定されます。

①セクシュアルマイノリティであることのみを理由として行うケース
例えば、セクシュアルマイノリティという理由のみで、解雇等の人事上の措置を行った場合、そのような措置を正当化する合理的な理由は見出しにくく、その措置は違法・無効とされる可能性が高いです。

②セクシュアルマイノリティであることと無関係の理由で行うケース
その措置を受けた社員の性的指向・性自認と無関係の場合は、セクシュアルマイノリティではない社員と同様の判断基準で解雇等の措置の有効性・適法性が判断されることになり、特段の考慮の必要はありません。

③セクシュアルマイノリティであることが間接的に影響しているが、それ以外にも理由があるケース
例えば、LGBTであることがトラブルの発端となっているケースでは、個別の事案ごとに企業・セクシュアルマイノリティ当事者側の双方に一定の理解・配慮と相互の調整が必要になります。
A .企業側に要請されるLGBTの人格的利益・プライバシー等への理解と配慮の内容・程度
B.セクシュアルマイノリティの社員に要請される職場の秩序維持等への配慮の内容・程度
C.双方の要請が対立した場合にその問題を解決するために行った協議の経緯・内容
このA〜Cが措置の有効性・適法性に影響することになります。

また③のケースでは、今後LGBTの理解が進むとともにAの判断要素について企業側が厳しめに判断されてしまう可能性がありますし、Cについても、企業側に合理的な対案の提示などにより実質的な協議が求められる可能性もあります。
したがって、予防法務の観点からすると、使用者はセクシュアルマイノリティの社員に対して、特に本人にとって不利益な内容を含む人事上・事実上の措置を実施する場合には、なぜそのような措置を行う必要があるのかについて合理的な説明ができるように、上記3つの要素も加味した上で慎重に検討しておくことが必要です。

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