職場におけるトイレに関する問題

トランスジェンダーの社員から、戸籍上の性別(身体上の性別)ではなく心の性別に応じたトイレの利用をしたいとの申し出があった場合どのように対応すれば良いのでしょうか?

トイレの問題は、LGBTの中でも、主にトランスジェンダーに多い問題であり、実際にトランスジェンダーのトイレの問題をめぐり訴訟も提起されています。
トランスジェンダーの社員としては、心の性に応じたトイレを利用したいということが本質的な希望であり、心の性に応じたトイレを利用できないことで排泄障害を患うこともあり、企業としてもなんらかの対応を行う必要があります。
他方、企業としても、職場の他の社員の理解が得られるかという問題や、施設の構造上の問題、改修費用等のコストの問題などが生じる可能性があり、明確な解決基準が見出しにくく非常に難しい問題と言えます。

トランスジェンダーの心の性に応じたトイレの利用についての問題点

女性用トイレの利用について、裁判例は「女性トイレは、痴漢などの犯罪予防の観点から、男性の侵入が拒絶される場所である。そこに、二人きりになることも考えられる以上、女性社員が、従前の男性として接していた従業員を、装いの変化を根拠に受け入れることは、心理的に容易ならざることである。このことからして、少なくとも男性としての外性器を有したままの状態である性同一性障害(性転換症)者に、女性トイレの使用を許可することは女性社員の抱く恐怖感と犯罪行為の恐れに鑑み、避けるべきであろう」との指摘がなされています。

次に、更衣室の問題については、「更衣室については、その空間が、衣服を脱ぎ、無防備な状態になる場所であることを考えると、トイレ以上の配慮が求められる。配慮にあたっては、女性社員のみならず、性同一性障害(性転換症)者についても、奇異の目で見られることのないように考慮することも必要と思われる。」との指摘がなされています。

したがって、トランスジェンダーの心の性に応じたトイレや更衣室の利用の問題を考える際は上記の点に留意する必要があります。

現時点における実務上の対応

上記の通り、トランスジェンダーの社員の心の性に応じたトイレや更衣室の利用は、さまざまな要素を考慮する必要があり、企業によって取り得る対応が違ってくる可能性があるため、何よりも重要なことは、本人がどのような希望を持っているのかを確認した上で、企業側の施設の構造上の問題、費用面の問題等を考慮して、解決策を見出すために本人との間で協議を尽くす他ないと言えそうです。
もっとも、解釈の指針となる法令等が存在しない現時点において、実務上取り得る対応の一例を挙げるとすれば、トイレのうちの一つをジェンダーフリーのトイレとすることから始めることが現実的な対応であると考えられます。

ただ、トランスジェンダーからすれば、根本的にはフェンダーフリーのトイレを利用したいのではなく、心の性に応じたトイレを利用したいという要望を持っていることがほとんどです。このような、人格的利益の問題もあり、また、トランスジェンダーであっても性別適合手術を受けることは負担が大きく、性別適合手術までは望まない場合もあります。

企業としては、他の労働者に対しても安全配慮義務を負っているものの、以下の3つの要素を総合考慮し、LGBT研修等により職場においても一定程度の理解を得られる状況になっているのであれば、その懸念はかなりの程度低減されているとみることも可能であり、トランスジェンダー社員に心の性に応じたトイレの利用に応じることを検討してみても良いかと思います。
①意思により性同一性障害であると診断されているか否か
②本人のこれまでの職場での振る舞い等の状況
③どのように見えるか

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