農地の相続と遺言について

農業従事者の相続にも、民法の規定が適用されますが、例えば、被相続人に数人の嫡出子がいれば、その子らは相続人として、被相続人の遺産に対し平等に相続分があります。
被相続人が農業を引き継ぐ相続人に農地を含めてより多くの遺産を相続させたいというような場合に、遺言書でその旨を指定することはできますが、他の相続人の遺留分を侵害しないように配慮が必要です。

しかし、その遺産の大半が農地というような場合には、遺留分侵害の可能性が高くなるかと思います。
なぜなら、農地は自ら耕作する者が所有するというのが原則だからです。
後継者以外の相続人も農業従事者であれば、その農地を分割して、各自が遺留分だけ取り戻すというようなことも出来ますが、農地従事者でなければ所有も売却も困難になります。
後継者が遺留分を買い取ることも出来ますが、相続する農地が大都市部の市街化農地などの場合には価格も高く、相当重い負担になってしまいます。

農業従事者は、農地の全てを農業の後継者に相続させたいというのが本音だと思います。
そのための方法としては
①農地を後継者に生前贈与する
②遺言でのうち全部を後継者に相続させる旨を指定する
③後継者以外の相続人にあらかじめ遺留分を放棄させておく
などがあります。

①の生前贈与は、他の相続人が遺留分侵害を主張してきた場合には、被相続人が亡くなった後に裁判になる可能性もあり、裁判となると時間も費用もかかってしまうので、たとえ少なくても、農地以外の遺産を他の相続人に残しておくなどの配慮が必要です。
ただし、この方法を選んだ場合には、後継者が被相続人より先に亡くなってしまったときには面倒な結果になってしまうこともあるので注意が必要です。

②の遺言は、公正証書遺言で作成しておくことが確実です。
また、仮に遺留分侵害があったとしても、被相続人が生前に他の相続人に結婚費用や進学費用、あるいは生計の資本などを負担していた場合には、そのことを明記しておくことである程度は他の相続人の主張をかわすことができるかと思います。

③の相続開始前の遺留分放棄は、被相続人の死後に行う相続放棄とは異なり、家庭裁判所の許可が必要になります。
そして、遺留分権者である推定相続人自身が自らの意思で、放棄の申し立てをしなければなりません。しかも、相続人自身が遺留分放棄を望んでいたとしても、必ずしも家庭裁判所の許可が下りるとは限りません。

個人商店や株式会社の相続もそうですが、特定の相続人に事業を単独相続をさせる場合の最大の問題点は、他の相続人に対する配慮と応分の経済的な手当です。
その配慮と手当てがないと、遺産相続をめぐってトラブルが起こってしまい、最悪ケースでは泥沼化してしまいます。
これは、農業の相続の場合にも言えることです。

後継者に農地全部を譲りたいという被相続人は他の相続人に対して、たとえ少しずつでも農地以外の資産を残し、遺留分を侵害される相続人の気持ちを和らげる努力が必要かと思います。
その努力と配慮があれば、相続人の多くが納得してくれるものと考えます。
また、単独相続をする後継者が、他の相続人それぞれに遺留分を分割で支払うなどの負担付き遺言を残すこともトラブル防止に役立つ一つの方法かと思います。

まずは日頃から、相続人を交えて自分の死後の財産処分や身分関係の処理について相談をし、話し合っておくことが1番の解決策に繋がるかもしれません。


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