遺言書を無効にするには

いざ父親の遺言書を見たら、自分が相続すると言われていた財産が、父親と同居していた姉が相続するという内容になっていた場合、「まさか、こんな遺言を父が作成するはずがない」と感じときには、遺言無効確認請求訴訟を提起するという方法があります。

遺言が無効となる原因、訴訟までの時間・費用

「遺言無効確認請求訴訟」とは、裁判所に対して、遺言が無効であることを認めてもらうという訴訟です。
残された遺言の無効性を認めてもらう要素を見つけてもらう必要があり、訴訟に至るまでには一定の時間と費用がかかることになります。

遺言が無効となる原因は、いくつか考えられます。
法定の形式と違う、遺言能力が欠如していた、錯誤・詐欺・脅迫により遺言が書かれた可能性があるなどが挙げられます。
他にも複数人が同じ遺言書で遺言を残す「共同遺言」や愛人などに全財産を遺贈するといった「公序良俗違反」なども無効の対象となります。

このうち、遺言の無効が争われる代表的なものとしては、遺言能力の欠如です。
具体的には、相続人が遺言を残した人が遺言書を作成したときに認知症であったなどの理由を主張するケースです。
すでに遺言をまとめるだけの能力が失われていた可能性があったとして、他の相続人との間で争いになる事例があります。

他には、遺言書がパソコンで作成されていたり、日付の記入や押印がなかったりという「方式違背」、つまり法定の形式と違う形で残された遺言が無効になってしまう例も少なくありません。ただし、こういったケースは無効になることが明らかなため、争いまでに発展することはほとんどありません。

遺言無効確認請求訴訟は、通常、時間がかかることが多く、訴訟を提起するまでの準備におおよそ数カ月かかり、第一審で1〜2年程度、控訴審で半年〜1年程度、上告審で半年程度かかることになります。
また、遺言が無効とされた場合には、それから、遺言分割協議を行う必要があり、協議が調わなければ、調停・審判に移行することになりますので、さらに1〜2年程度かかります。
そのため、遺言の効力を争う場合、解決に至るまでに数年を要することがほとんどになります。

遺言無効確認請求訴訟にかかる費用は法律事務所によって異なります。
ただし「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」に従い、遺言が無効と判断された場合に得られる経済利益を基準に計算するケースが多いと言えます。
例えば、同基準に従って計算をしてみますと、経済的利益(遺産)が1500万円だった場合に、着手金は84万円、報酬金は186万円になります。
その他に、控訴審や上告審、遺産分割調停や審判と、手続きが移行した場合には、その都度追加で費用が発生することになります。そうした想定外の支出を避けるためにも、依頼をする前に費用の見積もりを作成してもらうことをお勧めします。

訴訟の前に交渉を

このように訴訟には、時間も費用もかかりますので、交渉で決着するに越したことはありません。
負担を軽減するため、いきなり訴訟を提起するのではなく、まずは交渉から開始するのが一般的です。
方式違背など誰にでもわかる形式的な不備がある場合には、交渉で決着することが想定されます。

しかし、遺言能力の有無が争われる場合、判断が微妙となる事案が少なくありません。
また、感情的な対立もあることから、相続人同士で「遺言能力に問題はない」「いや、認知症で遺言能力はなかった」などお互いに意見を譲らず、交渉で決着しない事例が多いのも事実です。
その場合は、遺言無効確認請求訴訟を提起して解決を図るしかありません。

なお、遺言によって遺留分が侵害されている場合は早いうちに、予備的に内容証明郵便で遺留分侵害額請求権の意思表示をしておくことが大切です。それは、遺留分侵害額請求権の時効が1年と定められているためです。

遺言無効確認請求訴訟の流れを把握する

すでに述べたように、遺言能力の欠如は遺言の無効が争われる代表的な例です。
遺言能力の欠如を主張する場合、事前の準備が非常に重要です。
遺言能力を否定するハードルは高いので、闇雲に訴訟を提起しても、敗訴してしまう可能性が高いです。
そこで、遺言者が遺言書を作成した当時やその前後の時期における遺言者の遺言能力を判断するための資料の収集から着手します。例えば、病院のカルテや介護事業者のサービス提供記録などです。

これらの資料を収集・検討し、このまま無効主張して交渉や訴訟を進めていくか、あるいは無効を主張を断念して遺留分侵害額請求をするに留めるかなどの方針を決定していきます。

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