「遺言能力」とは

遺言をするためには「遺言能力」がなければ、その遺言は無効になってしまいます。
今回は、遺言能力に疑いのない遺言を残すためには、どのようにすれば良いのかお伝えいたします。

遺言能力の有無は遺言内容によって変わる

遺言に記載される内容には、さまざまなことがあります。
中でも、重要になってくるのは、遺言者の財産にはどのようなものがあり、それをどのように相続人に分けるのかということです。
これをきちんと記載しておけば、相続において多くの争い事を避けることができます。
しかし、遺言はいつでもどんな状態でも書けるわけではありません。遺言を遺すためには「遺言能力」が必要です。
万が一、遺言能力のない方が遺言を書いたとしても、その遺言は無効になってしまいます。

この「遺言能力」というのは、遺言を遺す本人が遺言の内容を理解できていて、その結果、自分の死後にどのようなことが起きるのかをきちんと理解することができる能力のことを言います。
これは、一般的に商売や高価なものの売買の有利不利を判断する能力よりは低い程度のものを意味すると言われていますので、たとえ成年後見人や被保佐人、被補助人であっても、また認知症であったとしても、一定の状況、遺言内容であれば遺言能力は肯定されることがあります。

どのような状況であれば、遺言能力があったと判断されるのか、裁判所においては遺言内容の重要性や内容の難しさと、遺言者の能力を表すさまざまな要素を総合的に判断した上で、その遺言をしたときに遺言者に当該遺言に関する遺言能力があったのかどうかが判断されています。
つまり、遺言能力の有無は遺言の内容によっても変わってくるということです。

医学的な要素が重要な判断材料に

遺言の内容が「少額の預金を相続人の誰にどのように配分するか」というような内容であれば、あまり難しいことを判断する遺言能力は要求されませんが、多くの社員の命運を左右する会社の株式や、収益不動産を含む高額かつ高度な財産を誰に相続させるかというような難しい内容のものであれば、それなりの判断能力が求められることになります。

その判断能力を判断するための基準としては、医学的な要素が重要になります。
まずは、遺言者の年齢です。
もちろん年齢だけで判断されるというわけではありませんが、高齢であれば総合的な判断を後押しする形で遺言能力を否定する方向に傾きやすくなるという程度で判断材料として使われます。

最も影響力が大きいものとしては、遺言者の診断書や、要介護認定の資料、長谷川式スケールの点数などです。
医師が客観的に遺言者を観察して診断した精神上の疾患や認知症など重症度の医学的判断は、遺言能力の有無にの判断において、とても重要視されることになります。
ただ、要介護度の数値については、単純に数値が高ければ判断能力が高い、低いということにはなりません。
要介護認定は、身体的な状況と認知症的な状況の総合的な判断で決まることになりますが、遺言能力の判断においてはあくまでも判断能力に関する能力が重要になります。

また、遺言者が遺言をした当時に、異常行動やおかしな言動がなかったかどうかも重要な要素になります。そういった行動が当時多かった場合には、遺言者には遺言能力がなかったと判断される場合もあります。
また、精神疾患の場合は以前の遺言者の行動や遺言に関する言動と、実際の遺言との間に齟齬がないかという点も遺言能力の有無に影響を与えることになります。

遺言能力に疑いがある場合の対処法

ひとつは、公正証書遺言にしておくという方法です。
公正証書遺言は、公証人が遺言者を面前に呼んで言動や行動を確認しながら作成しますので、遺言者に遺言能力があったということの担保になります。

もうひとつは、遺言を書く前後に医師の診察を受けて認知症でないこと、また認知症であるとしてもその程度をカルテに残しておくことも対処法のひとつになります。
その際に、改定長谷川式などの認知症検査を受けておくことも有用になります。しかし、カルテは5〜10年で破棄されてしまうことが多いので、診断を受けたら診断書を発行してもらい、カルテの写しを遺言書と合わせて保存しておくと良いでしょう。

1番の対策としては、判断能力に疑いがないうちに遺言書を書いておくということがお勧めです。
遺言は、何度でも書き直すことができますので、一度書いて毎年見直しを行うというのも良いでしょう。


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