相続放棄をしたいのに財産を受け取ってしまった場合

相続放棄をしたくても、財産を受け取ってしまったような場合は相続放棄は認められなくなります。
ただし、相続放棄をしても受け取れるお金もあります。
今回は相続放棄をしても受け取れるお金と、受け取ってしまうと相続放棄ができなくなるお金との区別を具体的にお伝えいたします。

遺産を受け取ってしまうと相続放棄ができなくなる?

相続人には、基本的には相続をするかしないかという選択肢が認められています。
相続をするという選択をする場合「相続の承認」、相続をしないという選択をする場合「相続放棄」と言います。
しかし、「法定単純承認」には注意が必要です。法定単純承認とは「法律で定められた一定の事由に該当した場合には相続をすることを承認したとみなしますよ」という制度になるからです。
相続をすることを承認したとみなされてしまうと、相続放棄ができなくなってしまいます。

では、どんなときに「法定単純承認」が成立してしまうのでしょうか。
・相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき
相続財産である不動産や動産を売却・譲渡したり、現金や預貯金を消費してしまったりすると相続放棄はできなくなってしまいます。例えば、「被相続人が亡くなったあとに預貯金を引き出した」「葬儀費用として被相続人の預貯金を使ってしまった」という場合です。
ただし、預貯金を引き出しただけであれば基本的には、相続放棄は認められます。
また、引き出した預金を自身の口座に送金して保管している場合には、処分したとも評価されかねませんので、その場合は預金を再度被相続人の口座に入金するようにしましょう。
すでに、被相続人の口座が凍結されてしまって入金できないような場合には、新たに口座を開設して入金をし、ご自身の口座とは別に管理するようにしましょう。

次に、葬儀費用に使ってしまった場合には、処分に当たらないと判断した裁判例があります。
この裁判例からすると、相続放棄は認められると考えられますが、他の事例でも同じ判断がされるとは限りませんので、個別の事情に応じて慎重に検討する必要があります。
なお、同裁判例では、葬儀後の仏壇や墓石の購入についても「貯金を解約し、その一部を仏壇及び墓石の購入費用の一部に充てた行為が、明白に法定単純承認たる「相続財産の処分」にあたるとは断定できないというべきである」とも判示しています。

・相続人が熟慮期間内に相続放棄をしなかったとき
相続放棄は相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内にしなければいけません。(熟慮期間)
事情があって期間内に相続放棄をするのかの判断が難しい場合には、期間伸長の申立てを行ってください。

・相続人が相続放棄をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき
これは、相続放棄をしたあとであっても、相続財産の所在をわからないようにしたり、相続債権者に不利益を与える意思で使ってしまったりした場合には、相続放棄の効力が認められなくなります。
なお、相続財産の目録については、限定承認に関するもので、単純な相続放棄の場合は関係ありません。

相続放棄をしても受け取れるお金

相続放棄をしても受け取れるお金かどうかは、「相続財産」と「固有財産」のいずれかによって変わります。
「固有財産」とは、遺族が固有の権利に基づいて取得する財産です。相続放棄によって受け取れなくなるのは被相続人の財産だけなので、「固有財産」は受け取ることができます。
相続放棄をすると受け取れなくなってしまうお金の例としては、
・被相続人が所有していた現預金・株式・不動産・動産・債権などの財産
・被相続人が受取人になっている保険金や共済金
・被相続人が払いすぎたために還付される税金や保険料、年金など
これらは、「相続財産」なので、相続放棄をしてしまうと受け取ることができなくなります。

相続放棄をしても受け取れる可能性があるお金の例としては、
・香典
・死亡保険金
・健康保険からの葬祭費や埋葬費
・遺族年金、死亡一時金
・未支給の年金
これらは、遺族の「固有財産」として受け取れる可能性があります。
ただし、保険約款や就業規則、法律などの規定によって異なります。
・仏壇仏具や神棚などの祭祀財産

相続放棄をする時に注意すべき財産

・生命保険の死亡保険金
死亡保険金の受取人が誰に指定されているかで異なります。
遺族が受取人に指定されている場合には、「固有財産」なので受け取ることができます。また本人(被相続人)が受取人に指定されている場合には、「相続財産」になり受け取ってしまうと相続放棄ができません。
受取人の指定がない場合には、「相続財産」になるかどうかは保険約款の内容次第になりますので、約款の確認をしましょう。

・未払い給料、死亡退職金
就業規則で受取人(支給先)が定められているかで異なります。
遺族が受取人に指定されている場合は「固有財産」となるので受け取ることができます。本人(被相続人)が受取人に指定されている場合や規定がない場合には「相続財産」になりますので受け取ってしまうと相続放棄ができなくなってしまいます。

・相続債務の支払い
支払いの原資が何かで変わります。
遺産から支払った場合には、相続財産の処分として法定単純承認に該当し、相続放棄ができなくなる可能性が出てきます。また、相続人の固有財産から支払った場合は問題ありません。

相続財産を受け取ってしまった場合は?

相続財産である死亡保険金などを受け取って使ってしまうと、法定単純承認に当たってしまいます。
受け取ったものの使ってないような場合には、相続人の口座か新たに口座を開設し、ご自身の口座と分けてをするようにしましょう。

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