成年後見人は誰が適任なのか(その1)

成年後見人とは、認知症などで意思能力が低い状態がある程度の期間続いている場合に、本人の判断をほかの人が補うことで、本人を法律的に支援するための制度で、2000年4月からスタートしました。
では、どんな人が成年後見人になれるのでしょうか。家族も成年後見人になれますが、どんなケースにおいても選ばれるわけではありません。今回は、家族が成年後見人になるケースとなれないケースの違いについて解説します。

「家族は成年後見人になれない」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
事実、最高裁判所事務総局家庭局が発表している、「平成30年1~12月成年後見制度の概況」によると、多くのケースで弁護士や専門家が成年後見人に選ばれていることがわかります。
しかし、2019年以降、成年後見制度の基本方針は変化を見せつつあります。

成年後見人の選任は家庭裁判所の判断にゆだねられる

成年後見人は成年被後見人(以下、単に「被後見人」とします)の財産管理や身上監護という重要な役割を担います。
そのため、家庭裁判所は成年後見人を選ぶ際に「誰が成年後見人にふさわしいのか」を可能な限り慎重に検討するのが通常です。被後見人の家族であっても、成年後見人として適当と家庭裁判所から判断されれば成年後見人になります。

成年後見人になる人は、被後見人の身近な家族といったイメージがあるかもしれません。たしかに家族は最も身近な存在であるため、被後見人の財産管理や身上監護を任せるには最適に思えます。被後見人の家族の立場なら、被後見人の財産を、専門家とはいえ見知らぬ第三者に任せるほうが不自然だと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際に、成年後見人に選ばれた専門家が被後見人の財産を使い込んでしまうケースもありますから、そのような事例を知ると「被後見人の家族を成年後見人に選んでほしい」との思いが強くなるのも当然のことです。しかし、家庭裁判所が被後見人の家族を成年後見人に選ぶかというと、必ずしもそうとは限りません。成年後見人の選任は完全に家庭裁判所の判断にゆだねられるため、成年後見人として家族を希望したとしても、実現するケースばかりではないのです。

親族が成年後見人に選ばれている割合は3割以下

実際の割合的には、家族(親族)以外の第三者が成年後見人に選ばれるケースが増加しています。
最高裁判所事務総局家庭局が発表している、「平成30年1~12月成年後見制度の概況」によると、配偶者や親兄弟などの親族が成年後見人に選ばれている割合は3割以下です。私たち行政書士や弁護士、司法書士などの専門職や市民後見人が成年後見人に選ばれるケースが7割を超えていることから、親族が成年後見人に選ばれにくいことがわかります。

なお、成年後見人の資格は特にありませんが、以下の事由に一つでも当てはまる人は成年後見人になれません。
・未成年者
・破産者
・過去に成年後見人等に選任されていたが、家庭裁判所から解任された者
・過去に被後見人に対して訴訟を提起した者およびその配偶者ならびにその直系血族
・行方不明者

これらの条件を、成年後見人の「欠格事由」といいます。成年後見人は豊富な社会経験や高い倫理観、被後見人と対立関係にないことを厳密に要求される立場にあるため、欠格事由を定めることで不適当な者を排除しているのです。

財産の使い込みのリスクが高い?

家族が成年後見人に選ばれる割合が低い背景にはさまざまな要因がありますが、とくに大きな理由が「不正防止のため」です。成年後見人に選任された家族が不正を行うリスクが問題視され、家族が成年後見人として検討される際の障害になっています。

ここで問題視される不正とは「財産の使い込み」です。たとえば、成年後見人は被後見人の代わりに被後見人の銀行預金を引き出せます。成年後見人は被後見人の財産へ簡単に手が届くわけですから、使い込みを犯すハードルは低くなります。
もちろん、不正など行わず適正に職務をまっとうする親族後見人が大多数ですが、実際に不正の事例が多いという事情がある以上、家庭裁判所としては選任に慎重にならざるを得ません。家族が選ばれないケースでは、行政書士や司法書士、弁護士などの専門職や市民後見人が成年後見人に選ばれます。
ただし、専門職後見人であっても使い込みなどは発生しており、専門家が優先して成年後見人に選ばれる傾向も見直されつつあるのが現状です。

多額の財産管理を家族に任せることを家裁が避ける

家族以外が成年後見人に選ばれやすいケースには、それなりの背景があります。
家庭裁判所が、家族を成年後見人に選ぶのは不適当と判断するだけの事情があるということです。その代表例としては「被後見人となるべき者に多額の財産がある場合」が挙げられます。多額の財産の管理を、家族に任せることを家庭裁判所が避ける傾向にあるので、たとえ家族が成年後見人に選任されたとしても、専門家が後見監督人に併せて選任されるケースが大半でしょう。被後見人となるべき者に、賃料収入など一定の事業収入がある場合も同様です。

また、成年後見人への選任を希望する家族と、被後見人候補との間で何らかの対立が生じている場合も、家族以外の第三者を成年後見人に指定する傾向にあります。ほかにも、家族内で成年後見人に関する意見の相違があったり、候補者が高齢だったりすると、家庭裁判所は第三者を成年後見人に選任するケースが主流です。家族を成年後見人に選ぶことで、被後見人に不利益が生じるおそれがあるかどうかは厳密にチェックされます。

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