成年後見人の申し立てから選任までの手続き(その2)

前回の「成年後見人の申し立てから選任までの手続き(その1)」では、法定後見の申し立てから選任までの手続きをメインにお伝えしましたので、今回は任意後見の申し立てから選任までの手続きをメインにお伝えいたします。

任意後見で後見人を選定する手続きの流れ

法定後見が、本人の判断能力が低下した後に開始する制度に対し、任意後見は、本人の判断能力が十分なうちに、将来、認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、任意後見契約を締結しておきます。

本人が任意後見人を選び、双方で任意後見契約の内容を決める

任意後見は、将来、任意後見人になってもらう人「任意後見受任者」と任意後見契約の内容を決めます。任意後見契約では、将来、判断能力が低下した後の財産の処分・管理方法を、自由に決めておくことができます。ただし、契約は当事者双方の合意が必要のため、本人が望んだとしても任意後見受任者が拒否すれば契約は成立しません。

したがって契約内容を決めるにあたり、自身のライフプランを明確にし、その実現のために、どの範囲の代理を依頼するのか、あらかじめ任意後見受任者と話し合って合意しておくことが必要です。

本人と任意後見受任者が書類を揃え、公証人との打ち合わせ日を決める

本人と任意後見受任者との間で契約内容がまとまったら、公証役場に予約します。任意後見契約は短期間の契約ではなく、通常は年単位の長期間に及ぶため、契約書作成にあたっては、任意後見契約の案文を用意したうえで、慎重に公証人と打ち合わせを行いましょう。

本人と後見人が公証役場で公証人に書類の作成を依頼する

公証人との打ち合わせにより、任意後見契約の内容が確定すれば、下記の準備書類を用意して、任意後見契約の作成を公証人に依頼しましょう。公証人とは、法務局長や裁判官など、永年法律に従事した法律の専門家のことで、中立的な立場で契約書を「公正証書」として作成し、作成したことを制度的に保証します。

<必要書類>
●本人(委任者)
①本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど)
②戸籍謄本又は抄本(3か月以内に発行されたもの)
③住民票(3か月以内に発行されたもの)

●任意後見受任者
①本人確認資料
②住民票(3か月以内に発行されたもの)

<費用>
1 公正証書作成の手数料:1万1000円×受任者数
2 正本・謄本の手数料:証書用紙1枚ごとに、250円(当事者用各1通、登記嘱託用1通)。また,原本についても4枚を超えるときは用紙1枚につき250円かかります。
3 登記嘱託手数料:1400円×受任者数
4 登記手数料(法務局に納付する印紙代):2600円×受任者数
5 登記嘱託書郵送料金:実費

本人、後見人、公証人が公正証書任意後見契約書にサインする

公証人が任意後見契約書を作成したら、契約当事者である本人「委任者」と任意後見受任者のほかに、公証人も署名・捺印を行います。通常、上記の成立の手続は、公証役場で行います。しかし、何らかの事情により公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張することも可能です。ただし出張料・交通費は別途かかります。

公証人が東京法務局へ登記手続きを行う

無事に任意後見契約が成立したら、公証人は契約書に記載された内容を登記する手続きを行います。たとえば、本人に任意後見受任者がいること、この任意後見人に依頼している財産の処分・管理方法などが記載内容にあたります。なお、登記手続を行えば「登記事項証明書」を取得できます。この時点での登記事項証明書では、まだ任意後見はスタートしていないため「任意後見受任者」として表示されます。

任意後見を契約後、本人の能力が低下したら

任意後見契約は、将来、本人の判断能力が低下した場合に備えて締結する契約です。したがって、本人の判断能力が十分なうちは何の効力も生じません。そしていよいよ本人の判断能力が低下し、任意後見契約を発動させる必要が生じたら、医師の診断書を取得したのち、家庭裁判所に対して下の任意後見監督人の選任の申立てを行います。

家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立手続きを行う

任意後見においても、家庭裁判所からの監督を受けることができます。しかし、本人の自由意思を尊重する立場から、家庭裁判所が直接監督する方法ではなく、任意後見監督人を通じて間接的に監督する方法がとられています。そのため、任意後見契約を発効させるためには、家庭裁判所に対して、任意後見監督人を選任する申立てを行うことになります。

家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、東京法務局へ登記する

家庭裁判所は、任意後見監督人選任の申立ての内容を審査し、その必要性を認めたら、任意後見後見監督人を選任した旨の登記手続を行います。この登記を行うことにより、登記事項証明書には、任意後見受任者は「任意後見人」と登記され、併せて任意後見監督人も登記されることになります。

後見人は仕事を開始

任意後見監督人が選任されれば、任意後見受任者は、正式に任意後見人となります。任意後見において、法定後見と同様に、任意後見監督人が選任されてから1カ月以内に、本人の財産調査を行い、財産目録を作成し、任意後見監督人に提出します。

任意後見人は、本人と予め締結した任意後見契約の内容に従い、本人を代理して、契約内容に沿って事務を行います。任意後見人は、本人の生活状況や財産状況について,任意後見監督人の指示に従い、定期的に事務の報告を行います。
なお、任意後見人には、代理権のみがあり、取消権はありません。

財産が多い場合は信託の利用を促されることも

法定後見の類型が「後見」の場合に、現金・預貯金といった本人の流動資産が約500万円以上ある場合、家庭裁判所から「後見制度支援信託」または「後見制度支援預貯金」の制度利用を促されることがあります。

家庭裁判所から制度利用を促されたとしても、必ずしも利用しなければならないものではありませんが、代わりに、弁護士や司法書士が後見監督人として選任される可能性があります。

後見制度支援信託や後見制度支援預貯金

本人がふだん使わない金銭を、信託銀行や銀行・信用金庫などの金融機関に保管して管理しておき、本人が日常生活で必要な金銭を預貯金として後見人が管理する制度です。信託銀行を利用する場合が「支援信託」、信託銀行以外を「支援預貯金」と捉えておけば良いでしょう。

生活費を超える支出が見込まれる場合には、家庭裁判所の指示書がなければ、後見人は本人の財産を引き出すことができない、といったように、本人財産の適切な利用・管理を行っていく制度です。

成年後見人等に専門家が選任されると、費用はどれくらい?

成年後見人等の報酬基準は、明確には公表されていませんが、平成25年1月1日付で、東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部が「成年後見人等の報酬額のめやす」を公表しています。

資産の額や業務の煩雑さによって金額は変わる

私たち行政書士や弁護士、司法書士などの専門家が後見人になった場合の報酬額は一定ではありません。本人の有する資産の額や業務の煩雑さによって、金額が異なります。

上の「めやす」によると、本人の財産額に応じて、次のように示されています。
 基本報酬 月額2~6万円(年額24~72万円)
 付加報酬 上記基本報酬の50%の範囲内
 ※付加報酬・・・本人が相続人となる遺産分割協議を行う、不動産を売却する、などの特別な行為をした場合に与えられる報酬。

月額表記ですが、通常は1年分の報酬を本人の財産の中から支払うことになります。

制度を理解して、有意義な人生を

本人の判断能力が十分なうちに、戦略的に利用する制度が「任意後見」、判断能力が低下して本人が困ったときに利用する制度が「法定後見」です。
成年後見制度は通常、本人が死亡するまで続きますが、どちらを選択するかで結果は異なります。本人が有意義な人生を送るために、この記事や関連記事を参考に検討されることをおすすめします。

人の人生に関わる制度であるため複雑な部分もあります。制度利用にあたって、ご不明点等ございましたら弊所にて無料相談を受け付けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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