同性パートナーの養子縁組のリスク

養子縁組をしておけば相続も簡単にすることができることなどから、気軽に養子縁組をしてしまうと、思わぬリスクを負ってしまうこともあります。
今回は、養子縁組のリスクについてお伝えいたします。

日本での同性カップルの現状と養子縁組

現在の日本では、同性間の婚姻は認められていません。
同性カップルは、法律上の婚姻の法的効果を得ることができませんので、一方の死亡によって自動的に相続人の地位を取得する婚姻関係とは異なり、同性カップルの場合には一方が死亡しても自動的に相続人にはなれないため、他方に財産を相続させたい場合には、あらかじめ遺言書を作成し、死亡後に他方へ財産を譲れるように準備しておく必要があります。

そこで、やむを得ず養子縁組という制度を利用しているカップルが少なからずいます。
養子縁組とは、年長者が他方の年少者を養子にすることによって、年少者が他方の年長者の嫡出子になるという制度になります。
養子縁組が成立し、養子が養親の嫡出子の身分を取得するということは、養親との関係では法定相続人になるという意味を持ちます。また、養子は養親の氏を称するとされていることから、養子縁組をしたカップルは同じ氏になります。
養子縁組により親子関係が形成されるので、病院での取り扱いや家族割引の適用など、社会的に家族として扱われることになります。

養子縁組に伴うリスク

同性カップル間で養子縁組をすることによるリスクとは、どのようなものが考えられるでしょうか。
養子縁組が成立するためには、縁組意思の合致が必要であり、これを満たさない養子縁組は無効になります。
「縁組意思」の意義につき、最高裁判所は次のように判示しています。
「民法802条1号にいう縁組をする意思とは、真に社会通念上親子であると認められる関係の設定を欲する意思をいい、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があったとしても、それが単に他の目的を達するための便方として仮託されたに過ぎず、真に養親子関係の設定を欲する効果意思がなかった場合においては、養子縁組は効力を生じないと解するのが相当である。」
この判例からすると、同性カップルは「社会通念上の親子関係」を築きたいがために養子縁組をするのではなく、「婚姻と同様の効果を得たい」という意思のもとに養子縁組をするので、「他の目的を達するための便方として仮詫された」養子縁組であり無効だとして、親族間で争いの対象となってしまう可能性があります。
同性カップルの中には、家族に対しても自身のセクシュアリティについて隠しているケースも多く、親族内で相続が発生したとき、突然、自分の兄弟姉妹や親などが、見知らぬ者と養子縁組をしており、見知らぬ者が法定相続人になっていたということが発覚すれば、親族は驚くでしょうし、場合によっては親族間で争いとなる可能性があります。
争いになってしまった場合には、先ほどの判例に倣い、養親縁組が無効であると判断されてしまう恐れがあるかもしれません。

また相続が発生していなくても、養子縁組の事実は戸籍に反映されますので、偶然戸籍を見られた際に、意図しないカミングアウトとなってしまう可能性もあります。
そして、同性カップルだけであれば、相続は年長者から年少者への一方通行でなされますが、年長者に実子がいるような場合にはその分相続分は減ることになりますので、相続面でも同性婚を代替できるとまでは言えません。

また、法務省民事局でも、縁組意思を欠く養子縁組届出を防止するために、疑わしい事案については調査をし、場合によっては不受理とするという通達を出しています。
この法務局の通達ですが、本来は「サラ金のブラックリストに載ってしまい、再び借金をするために氏を変えるべく養子縁組をする」と言ったケースの養子縁組を防止するために出されたものなので、同性カップル間の養子縁組を想定したものではありません。
しかし、同性カップル間の養子縁組についても、縁組意思が疑わしい養子縁組として調査の対象とされたり、不受理の扱いがされる可能性というのはゼロではありません。

そのほかにも、今後同性婚制度が制定されるなどして、同性カップルに婚姻と同様の法的補償がなされる制度が導入された場合に、養親子間の婚姻禁止が同性婚制度にもそのまま引き継がれるとなった場合には、一度養親子関係を築いてしまうと同性婚の障害自由となってしまうかもしれません。

このように、同性カップルが養子縁組するということには、一定のリスクがあることを理解した上で、制度を利用するかどうかを検討するようにしてください。

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