被相続人の連帯保証人調査

被相続人が他人の債務を連帯保証していた場合、相続人は思いがけず多額の債務を相続してしまう可能性があります。
連帯保証債務の相続を避けるためには、迅速な調査を行ったうえで、相続放棄の可能性をご検討ください。
今回は、連帯保証債務の相続に関連して、被相続人が連帯保証人かどうかを調べる方法や、相続放棄に関するルールなどをお伝えいたします。

1. 連帯保証債務は相続の対象になり得る

「連帯保証債務」とは、他人が債務不履行(例えば、借金の滞納など)を起こした場合に、代わりに債務を弁済する義務をいいます。
連帯保証債務を負担する人を「連帯保証人」と呼びます。

被相続人が他人の債務を連帯保証している場合、連帯保証債務が相続の対象になるケースがあるので注意が必要です。

<相続の対象となる連帯保証債務>

  • 特定保証(主たる債務が特定されている保証)の連帯保証債務
  • 極度額の定めがある根保証(主たる債務が特定されていない保証)の連帯保証債務
  • 極度額の定めがない根保証の連帯保証債務のうち、相続発生時点ですでに発生しているもの

<相続の対象とならない連帯保証債務>

  • 極度額の定めがない根保証の連帯保証債務のうち、相続発生時点で未発生のもの
  • 身元保証の保証債務

もし巨額の連帯保証債務を相続した場合、相続人が自己破産に追い込まれる例も存在します。
そのため、相続開始後速やかに、被相続人の連帯保証債務の有無を調査したうえで、適切に対処することが大切です。

2. 被相続人の連帯保証債務を調査する方法

連帯保証人に対して債務の履行請求が行われるのは、主債務者が債務不履行を起こした場合のみです。
そのため、被相続人が連帯保証債務を負っていることに気づくきっかけは、(実際に請求を受けている場合を除けば)それほど多くはないかと思います。

被相続人が連帯保証債務を負っていることを調べる際は、自宅や経営する事業所にある契約書類を調べることが先決です。
連帯保証債務は、連帯保証契約によって発生するので、該当する契約書類がないかを確認しましょう。
特に被相続人が事業の経営者の場合には、事業関連の債務を連帯保証しているケースが多いので注意が必要です。

また、以下の方法で調査することも考えられます。

  • 被相続人との間で、事業に関して交流があった人に質問する
  • 被相続人が使用していたPC・スマホのデータ(メールなど)を調べる
  • 留守電や郵便物を確認する
  • 預貯金の入出金履歴を調べる

契約書が見つからない場合は、とにかく幅広い方法を用いて、連帯保証債務の有無を調べることが大切です。

3. 連帯保証債務の相続を避けるには「相続放棄」

連帯保証債務の相続を避けるためには、「相続放棄」の手続きをとる必要があります。
相続放棄とは、資産・債務を含めて、相続財産を一切承継しないという意思表示です。
相続放棄をした者は、初めから相続人にならなかったものとみなされ、連帯保証債務の相続を回避できます(民法939条)。

ただし、相続放棄は原則として、相続の開始を知った日から3カ月以内に行う必要があります(民法915条1項。この3カ月の期間を「熟慮期間」と呼びます)。
そのため、被相続人が連帯保証債務を負っているかどうかを、迅速に調査することが大切です。

4. 相続放棄すべきかどうかの判断基準

相続放棄は、一般に相続負債が相続資産を上回っている場合に有力な対処法となります。
被相続人が連帯保証人のケースでは、連帯保証債務の総額が、相続財産中の資産額を上回っていれば、相続放棄をすべき場合が多いでしょう。

ただし、連帯保証債務の場合は、主債務者がきちんと債務を支払いさえすれば、連帯保証人に対して請求が行われることはありません。
したがって、主債務者の資力があるかどうか、過去に債務を滞納したことがないかといった要素も、相続放棄をするかどうかの判断材料にしましょう。

なお、連帯保証債務以外にも、被相続人が多額の債務を負っていることが明らかとなった場合は、すぐにでも相続放棄をご検討ください。

5. 相続放棄の熟慮期間を延長してもらうには?

前述の通り、相続放棄が可能な期間は、原則として相続の開始を知った日から3カ月以内です。
しかし、連帯保証債務の有無を含めて、相続財産の調査に時間がかかり、上記の熟慮期間に間に合わないことも考えられます。

この場合、家庭裁判所に対して請求することで、熟慮期間の伸長が認められる可能性があります(民法915条1項但し書き)。
相続財産の調査に時間がかかりそうなことが分かった時点で、その理由を付して、熟慮期間の伸長を請求しましょう。

6. 相続放棄の熟慮期間が過ぎてしまった場合の対処法は?

連帯保証債務その他の債務に気づかず、相続の開始を知ってから3カ月が経過してしまった場合でも、実務上は相続放棄が柔軟に認められる傾向にあります。
もし熟慮期間が経過してしまった場合には、家庭裁判所に対して、相続放棄が遅れてしまった理由を丁寧に説明しましょう。
理由説明が合理的なものであれば、相続放棄が認められる可能性は高いので、諦めずに専門家へ相談することをお勧めします。
なお、万が一相続放棄が認められなかったとしても、時効援用や債務整理によって、連帯保証債務の免除や減額が認められる可能性がありますので、相続した連帯保証債務の負担が重すぎる場合には、お早めに専門家へご相談ください。

7. まとめ|早期の調査・相続放棄の検討により、連帯保証債務の相続を避けましょう

被相続人の連帯保証債務を見逃してしまうと、相続人は思わぬ高額の債務を承継してしまうおそれがあります。
特に被相続人が事業を経営していた場合、事業関連の債務を連帯保証しているケースが多いので、相続手続きの際に十分な調査を行うことが大切です。
被相続人の連帯保証債務が判明した場合は、早急に相続放棄の検討に着手しましょう。
原則として、相続の開始を知った日から3カ月以内に相続放棄を行う必要がありますが、遅れてしまった理由が合理的であれば、期限後の相続放棄も認められることが多いです。

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